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「殺人狂時代」

『モダン・タイムス』につづいて、チャップリンの『殺人狂時代』を紹介する。




あらすじ:

不況によって、30年勤めていた銀行を解雇されたアンリ・ヴェルドゥ。
彼は妻子を養うために犯罪に手を染めていた。金持ちで孤独な中年女性を誘惑し、
殺害、金品を盗むのが犯行の手口で、3年もの間に14人もの女性を殺害してた。
ある夜、殺害に使う毒薬の実験のために、女性を求めてさまよっていたヴェルドゥは、
ひとりの女性と出会う。彼女は刑務所帰りの前科者で、
入獄中に夫を失っていた。彼女の境遇を知ったヴェルドゥは毒薬による殺害を
あきらめ、彼女に食事といくらのお金を与えて帰す。

ヴェルドゥは二人の中年婦人を狙っていた。アナベラとグロネイ夫人がその二人。
彼は何度もアナベラ殺害を企てるも、ことごとく失敗する。そんな彼のもとを
ひとりの中年男性が訪ねてくる。男の名前はモロー警部。中年女性の連続失踪事件を
捜査する警部で、彼はヴェルドゥが犯人であると確信してあらわれたのだ。
ヴェルドゥはワインに毒をもって警部を殺害する。薬の効果によって、警部の死は
心臓麻痺による突然死として処理された。

ヴェルドゥはグロネイ夫人と結婚しようとする。しかし、結婚式場でアナベラと
鉢合わせとなり、ヴェルドゥは計画をあきらめ逃亡を余儀なくされる。

それから数年後、世界は大恐慌とファシズムの台頭によって混乱期を迎えていた。
ヴェルドゥは殺人で築き上げた財産はおろか、養ってきた家族すら失い、孤独となる。
そんな彼の前に、軍需産業の社長夫人となったあの女性があらわれる。女性との再会で、
運命を感じたヴェルドゥは、警察にすすんで逮捕される。

青ヒゲ裁判として、ヴェルドゥが起こした数々の事件は新聞に取り上げられる。
死刑判決を受けたヴェルドゥは、犯行を認めたうえで、戦争は自分以上に多くの人間を
殺していると言い残し、死刑台へと歩いていく……。











喜劇(コメディ)役者として知られるチャップリンだが、本作はお笑いの要素が
ほとんどない、シリアス・サスペンスの物語である。

トレードマークであったチャップリンスタイルを捨て、雄弁な殺人鬼を演じている。

彼(ヴェルドゥ)が殺害する人間は中年女性。女性はみなブルジョワジーの人間であり、
彼女らを殺害するヴェルドゥには罪悪感のかけらもない。そんな彼は、猫をいじめる
息子に対してこんなことを言っている。

暴力は暴力を生む」




本作はある殺人鬼の死を描いた物語だが、チャップリンは殺人鬼ヴェルドゥを
通じて戦争や社会批判を行っている。

殺人鬼であるヴェルドゥは30年間勤めていた銀行をクビにされた。
それも整理解雇で最初の順番に、である。

ここに、資本主義社会が持つ冷たさが描かれている。ヴェルドゥは殺人鬼である前に、
社会の犠牲者なのだ。そんな彼が狙う女性たちは資本主義の象徴。ヴェルドゥは、
復讐者でもあるのだ。だから、罪悪感というものがない。

そんな彼は裁判で次のような演説を行っている。


大量殺人は世界が奨励してるんです。
大量殺人のための破壊兵器を製造しているんです。
何ひとつ疑ってない女性を殺し、何も知らぬ小児を虐殺。
しかも科学的に行ってます。
大量殺人では私はアマチュアです。だが今は平静を失いません。
じき頭を失うのです。しかしながら、生命の焔を消されるにあたって、
申し上げておきたい。私は皆さんに会う。すぐに。ほんとにすぐに





チャップリンは、ヴェルドゥという人物を通じて、大量殺人鬼も私たちも
本質的にはかわらないと言っているのではないだろうか。

私たちは直接的に、死にかかわることはない。また、人を殺す経験をする者も
ほとんどいないだろう。しかし、何らかの形で人の死にかかわっているのだ。

死刑制度に賛成すること、脳死状態の親類縁者の生殺与奪の機会を得ること、
子供を産むことをあきらめ中絶すること……。
そして、戦争。





現実の世界において、ヴェルドゥの存在を認めることはできない。排除されるべきである。
しかし、そのような存在を排除する社会も、実は同等なのだ。『虐殺器官』で描かれた
テーマは、チャップリンによってすでに確立されていたのである。


1人殺せば悪党で、
100万人だと英雄です。
数が殺人を神聖にする。



本作を見たことがない人も、この言葉だけならどこかで聞いたことがあるはずだ。





ラストシーン。神父との対話の場で、ヴェルドゥはこう言う。

罪とは何です?
堕ちた天使から生まれるのですか?
究極の運命を誰が知ってます?
罪がなかったらあなた(神父に対し)は何をします?








本作はとても後味の悪い作品である。
公開当時、アメリカ国内では政府要人らによるチャップリン批判も行われていた。
本作は興行的失敗をむかえ、やがてチャップリンはアメリカから追放されることとなった。

「街の灯」「モダン・タイムス」「独裁者」など、それまでの作品以上に、
痛烈な社会批判を行ったからだろう。

ヨーロッパではその思想性が評価されたそうである。ここはファシズムと全体主義が
生まれた土地である。その土地で、「殺人狂時代」が行った問題提起は多くの人々の
心をつかんだに違いない。


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