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「第三の男」

大学の授業で「第三の男」を見た。
英米の探偵小説作家としても知られるグレアム・グリーンによる脚本で、
監督はキャロル・リード。物語の鍵を握る人物をオーソン・ウェルズが好演。





あらすじ:

第二次世界大戦後のウィーンは、米英仏ソの四カ国によって分割統治を
されていた。その地に、ひとりのアメリカ人がやってくる。彼の名は
ホリー・マーチンス。西部劇を書く三流作家で、20年来の親友である
ハリー・ライムを訪ねてはるばるウィーンへ来た。だが、なんとハリーは
自動車事故によって死亡していた。驚きを隠せないホリーは、
ハリーの葬儀に参列する。そこでイギリス軍のキャラウェイ少佐と
知り合う。彼によれば、ハリーは犯罪を行う闇商人だという。少佐の話を
信じられないホリーは、親友の死の真相を究明するべく奔走する。

ホリーは、親友の恋人であったアンナ・シュミットと行動をともにし、
交通事故が起きた現場の建物に住む門衛を訪ねる。彼は目撃者でもあった。
門衛によると、事故現場には三人の男がいたらしい。道路で撥ねられたハリーは
その三人の男によって道路から歩道に移されたという。そのうち二人は何とか
分かったが、三番目の男は分からずじまいであった。調査を続けるホリーで
あったが、目撃者であった門衛は何者かに殺され、ホリーは疑いをかけられることに。
さらに、同行していたアンナが警察に拘束され、不法入国者であることがばれてしまう。
アンナはドイツ語を理解できる女性であり、ホリーの行動を支える人物でもあった。

行く手を塞がれる形となったホリー。その彼は、なんと死んだはずの親友ハリーの
姿を目撃してしまう。ホリーはすぐさまキャラウェイ少佐に伝える。これまでホリーに
冷たく非協力的な態度をとってきた少佐は態度を一変、ホリーに真実を話す。

戦後のウィーンではペニシリンが不足していた。ハリー・ライムは闇組織の人間として
ペニシリンの粗悪品を密造・販売、巨額の利益を得ていた。そして、彼が売った薬は
多くの人々の生命を害していた。

少佐らはハリーが埋められた墓へ向かう。土を取り除き、棺を開いてみると、中には
ハリーではなく、彼の仲間の死体が入っていた。ハリーは死を偽装したのである。

捜査資料に目を通し、真実を受け入れたホリーは、条件付きで少佐らに協力を誓う。
その条件は、アンナに対する寛大な処置であった。ホリーは、遊園地でハリーと会う。
悪びれる素振りをみせず、自らの犯罪哲学を誇らしげに語るハリーは、ホリーに
仲間に加わるよう声をかけ、再び会うことを約束する。

拘束を解除されたアンナは、汽車に乗ってウィーンから旅立とうとしていた。だが、
彼女は駅でホリーを発見する。ホリーから全ての事情を聞いた彼女は彼に激怒する。
親友を裏切ることに引け目を感じたホリーは、少佐に協力することをやめ、祖国に
帰ろうとするが、少佐に案内された病院でハリーの犯罪による犠牲者を目にしたあと、
改めてハリーの凶悪さを感じ、彼をおびき出す作戦に加わることとなる。

夜、カフェで落ち合うこことなったホリーとハリー・ライム。そこへなんとアンナが
現れる。ホリーが警察の手先であることを見抜いた彼女は、ハリーを逃がす。
警察とホリーは、ハリーを追って地下水道へと向かう。

地下水道を逃げ回るハリー。銃撃戦が行われ、ハリーは深手を負う。そして、ホリーは
親友に拳銃を向ける。

死亡したハリーの遺体は埋葬された。アンナにほのかな恋心を抱いていたホリーは、
アンナを並木道で待つが、彼女は彼のことを無視するように、硬い表情のまま並木道を
通り過ぎて行った……。











本作を見たことがない人でも、本作のテーマ曲なら知っているはずだ。



プレミアムモルツのCMなどに使われている、「ハリー・ライムのテーマ」だ。


音楽担当はアントン・カラス。ツィターという楽器の奏者で、
ほんらいは別の人間が音楽を担当する予定であったが、
ウィーンを訪れたキャロル・リードに興味を持たれ、音楽担当に抜擢される。
本作の音楽はすべてツィターによるメロディとなっている。演奏はカラス本人によるもの。
ツィターを背景にしたタイトルバックは秀逸である。





本作の主人公は三流小説家のホリー・マーチンスが主人公であるが、
オーソン・ウェルズが演じるハリー・ライムに食われた感がある。
だが……その登場時間は合計で30分足らず!?


観覧車での登場シーン以降は、彼が主役で、
物語の主人公であるホリーの印象は一気に薄くなっていく。

ハリーは凶悪な闇商人として警察から目を付けられている人物で、
監視を逃れるために死を偽装した。けれども、それがばれ、
最後は地下水道に追い詰められて射殺されてしまう。

彼は「罪のない女子供までも殺そうとする大悪党」として説明されるが、
その直接的描写はない。また、彼が犯罪を始めるまでにいたる過程もない。
ただ漠然と、凶悪な闇商人のレッテルが存在するだけである。
それを不服と思うことなく、ハリーは堂々と親友ホリーの前に姿をあらわす。

ハリーは強者として画面に登場し、そのイメージを観客に植え付けるのである。
どこか頼りなさそうなホリーとは対照的な男。

だが、そんなハリーは最後の地下水道の場面において、
ネズミのように逃げまどうことになる。彼の表情には、遊園地の場面で
見せたような余裕や、強者を思わせるイメージはない。空爆から逃れる避難民のように
弱々しくみえる――それがハリー・ライムの本性なのだ。

強く、怖く、そして常に主人公の行く手を塞ぐ存在……。

私たちはこのようなイメージを、物語における悪党に対して抱いている。
「スターウォーズ」のダースヴェイダーや、「バットマン」のジョーカー、
「ハリーポッター」のヴォルデモート、「悪魔のいけにえ」のレザーフェイス、
「ターミネーター」のT-800、「エイリアン」のエイリアンなどはその最たる例である。

本作において、ハリー・ライムはたしかに悪党である。
だが、物語終盤における彼は、悪党(あるいは大悪党)というよりは、
コソ泥のような小心者である。そこに、ハリー・ライムという存在の人間味を
見出すことができる。悪党という単なる憎悪の対象に収まらない存在となるのだ。

「ボルジア家…」からはじまる演説を言った人間が最後になって追い詰められるさまは、
まるで悲喜劇である。物語の作り手は、「どんな悪も最後は滅びる」といったメッセージを
ハリー・ライムという登場人物に込めたのではないだろうか。

地下水道の場面を見たとき、「仁義なき戦い 広島死闘編」に登場する大友を思い出した。
暴力的な悪の象徴が、ヒットマンに狙われるや否や段ボールで身を守ろうとするその狼狽ぶりは、
ハリー・ライムを参考にしたように思われる。








映画のみならず、物語はふたつの大きな軸から成り立っているという話を耳にしたことがある。

ひとつは「発見」。愛や夢などを見つけ、獲得していく物語。

もうひとつは「喪失」。愛や夢、果ては生命を失う物語。
多くの物語はこの二つのどちらかを軸としているという。



このふたつの軸で当てはまるものは「喪失」である。
本作には複数の喪失が描かれている。その数は全部で三つ。

一、友情の「喪失」。主人公の小説家ホリーにとって、ハリー・ライムは
20年来の親友であった。その彼の悪事を知ることによって、友情は失われてしまった。
ホリーはライムにとどめの一撃を加えることとなる。


二、愛の「喪失」。ハリーにはアンナ・シュミットという恋人がいた。
アンナにとって、ハリーは恩人であり、愛するべき男であった。
しかし、ハリーの悪事の前に、その心は揺らいでいく。愛情は憐れみへと変わってしまう。
そして、ハリーの死によって彼女は愛すべき対象を失ってしまった。
そんな彼女に恋心を抱いてしまったホリー。だが、彼は警察と手を組んだことでアンナの怒りを
買ってしまう。最後の場面では、並木道を歩く彼女を待ち伏せるものの、
アンナは彼を通り過ぎて行く。ホリーもまた愛を失ったのだ。


三、ハリー・ライムの「喪失」、つまり死。ハリーは単なる登場人物ではない。
ホリーとアンナを繋ぐ存在であり、また同時に物語を動かす鍵でもあった。
ハリーの存在があったからこそ物語は進行していたのだ。その生命が失われたことで、
物語も終わりを告げるのだ。



最後のロングショットはとても印象的である。まるで風景画のようでもある。
通り過ぎたアンナ。ひとりタバコをくわえるホリー。

フィルム・ノワール、ハードボイルド作品の教科書ともいうべき、哀愁漂うシーンだ。




このラスト。本来はハッピーエンドになる予定であった。それが、監督らに
よって改変されたという。また、グレアム・グリーンによる小説版が存在するが、
そちらは映画と若干、内容が違うそうである。機会があれば読んでみたい。

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飾りです。偉い人にはそれが
分からないのです(苦笑)
詳しくは「はじめに」を
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