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「ジェイン・エア」

シャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」を読んだ。
以前、地元のマンガ倉庫という中古本屋で買った集英社文庫で、
翻訳者の解説を合わせると全部で650P

文庫本なのにお手軽感がないのはなんともいえないが、
そんなことは脇に置いといて、あらすじと感想に入りたいと思う。






あらすじ:

幼いころに父と母を失った少女ジェイン・エアは、親戚のリード夫人のもとで
暮らすこととなった。良家の人間である夫人はジェインを快く思っておらず、
彼女の息子であるジョンはジェインをたびたびいじめていた。そのために
ジェインは不幸な生活を送っていた。彼女が十歳のある日、彼女がジョンに
抵抗し暴れたことなどがきっかけとなり、ジェインは孤児院に入れられることとなる。

ローウッドの貧しい孤児院に入れられた彼女であったが、そこで校長の
テンプル先生やヘレンという少女と交友関係を築き、勉学に励んでいく。
キリスト教精神を持つその孤児院の管理体制は悪く、流行病であったチフスに
よって多くの生徒が病死。そのなかには彼女の親友であったヘレンもいた。
ヘレンと永遠の別れをかわしたジェインは、八年の時を孤児院で過ごす。
そのうちの二年間は教師として働き、充実した時となった。

新たな環境で働くことを夢に抱いていたジェインは求人広告を出し、ほどなくして
ソーンフィールド邸で家庭教師として働くことになる。彼女はその家の主である
ロチェスターが後見を務める少女アデラの教育に携わるうちに、ロチェスターに
興味を憶えていく。彼女はある夜、屋敷に住む謎の女グレース・プールがロチェスターの
部屋に火をつけようとするところを目撃する。ロチェスターの命を救ったジェインだが、
その彼女にロチェスターは口止めを願う。

家庭教師としての日々が過ぎていくなかで、ジェインはロチェスターに主従関係を
越えた感情を抱くようになる。だが、彼女はロチェスターがイングラム嬢という良家の
娘と結婚することを知り、自分がやがて屋敷を去らなければならないことを知る。
そんなある時、彼女のもとにベッシーという女性がやってくる。リード夫人に仕えていた
女性で、ジェインともわりと仲の良い間柄であった。彼女はジェインをリード夫人の下に
連れていくためにやってきたのだ。ベッシーによると、リード夫人の長男であるジョンが
放蕩生活の末に謎の死を遂げてから夫人の体調は悪化するばかりで、その命も長くは
持たないという。かつては夫人に対して憎悪の念を抱いていたジェインであったが、
リード夫人の屋敷に戻ることになった。

八年ぶりの再会を果たしたジェインとリード夫人。そのリード夫人はジェインへの憎悪を
捨てきれぬまま亡くなる。彼女には二人の娘がいたが、自分たちのことしか考えない
人間であった。ジェインはかつて住んでいた地に別れを告げ、ロチェスターの住む屋敷に戻る。
イングラム嬢と結婚すれば自分は邪魔者となり解雇されるだろう事を覚悟していたジェイン。
だが、なんとロチェスターにはイングラム嬢と結婚する気などなかった。彼はジェインを
愛していたのだ。ロチェスターの求婚を受けたジェイン。

結婚式を行おうとするロチェスターとジェインであったが、その二人の前に衝撃の事実が
訪れる。なんとロチェスターは既婚者であり、ジェインとの結婚は重婚罪になるという。
そして、ロチェスターの妻とは白痴のグレース・プールであった。ロチェスターはいまは亡き
父と兄らの仕掛けた陰謀によってグレースと結婚させられる羽目となり、不幸な生活を
送っていた。彼はグレースと離婚したい思いでいたが、彼女の病のためにそれが叶わず、屋敷に
これまでずっと幽閉してきたのである。

教会にあらわれた弁護士とグレースの兄メーソンによって伝えられた事実によって
結婚は破綻となった。ジェインはロチェスターと別れることを決心し、屋敷を飛び出す。
あてもなき旅の果てに彼女はシン・ジンという牧師のところに身をよせるところになり、
学校の教師として働き始める。のちにシン・ジンがジェインの従兄であることが判明、
ジェインは二万ポンドの遺産を相続することになる。だが、お金よりも家族を得たことに
喜びを感じた彼女は、シン・ジンとその妹二人と遺産を分割することに決める。

シン・ジンとインド語を学ぶようになったジェイン。ある日、シン・ジンは彼女に
インドでの布教活動への同行を求める。シン・ジンは神のお告げなどという言葉を用いて
ジェインに結婚を迫るが、彼女の心の中には常にロチェスターの存在があった。彼女は
妹としてならばインド同行を承諾するが、結婚することはできないという意思をあらわす。
その思いに納得のいかないシン・ジン。従兄の言葉に迷う彼女はロチェスターの叫び声を
耳にする――ロチェスターがジェインの居場所を知るはずはなかった。

ロチェスターの声を聞いたジェインは、ソーンフィールド邸を訪れるが、そこには
屋敷は存在しなかった。ある秋の頃に、グレース・プールが狂乱の果てに屋敷に火を放ち、
その火事が原因で屋敷は燃えてなくなったという。グレース・プールは死亡し、主である
ロチェスターは屋敷の人間を避難させている途中で逃げ遅れ、火事によって片腕と両目の
視力を失い失意の日々を送っているという。近所の人間からロチェスターの不幸を聞いた
ジェインは、愛しき相手が住む古い家へと向かう。

彼女は十か月ぶりにロチェスターと再会する。彼女は自分のすべてを彼に委ねることを
決意し、ようやく二人は結婚を果たす……。














長い物語であったが、三日間かけて最後まで読みとおすことができた。
それは、本作の文章がわりと分かりやすかったことと、その物語の面白さにあったからといえる。





さて、本作の主人公であるジェイン・エアは強い女性として描かれた。
屋敷の主人であり屈強な肉体をもち誇り高きロチェスターにも、敬虔で偉大なるシン・ジンにも
屈することなく、ジェインは自らの心を保っている。きわめて自立心があるということだ。

いまの時代ではそのような女性は珍しくはないかもしれないが、
本作が描かれた当時はとても珍しい人間であった。

とくにイギリスは(今もそうかもしれないが)階級社会の国であり、
身分差別というものが日本以上に存在していた。
(それらは森薫の「エマ」を読めば分かりやすい。
あるいはこのブログで以前紹介をした「じゃじゃ馬ならし」を参考にしてもらいたい)

http://himatubusinoheya.blog89.fc2.com/blog-entry-328.html



女性は男性にとっての飾りであり、男性よりも下の存在とされてきた。
ゆえにシャーロット・ブロンテが描く「ジェイン・エア」の主人公は斬新な登場人物として
多くの読者に迎えられることとなったようである。



本作が斬新だったのはその主人公の性格だけではない。
ふつう物語の主人公というものは、女性のばあいは美人であった。
ところが何度も作中で描写されているとおり、彼女はブサイクではないが美人とはいえない。
いたって普通の女性なのである。その点も、当時としては一線を画すキャラクターであった。

では、彼女が物語の初めからそうだったかというとそうではないことは読めば分かる。
物語の最初に描かれるジェインは虐待される不幸な少女であった。その彼女が孤児院での
ヘレンとの邂逅によって大きく成長していくのである。
(物語もだんだんとキリスト教的価値観があらわれるが、読者がそれをわずらわしく
感じることはほとんどないだろう――「罪と罰」に比べればの話ではあるが……)







そんなヘレンの言葉をふたつほど引用したいと思う。

人に悪くされてそれをいつまでも覚えていて恨んだりするには私たちの一生は
短すぎると思う。私たちはこの世では皆欠点を背負って生きていて、また
生きてゆかなければならないのだけれども、そのうちに私たちのいずれ
消えてなくなる肉体とともにそういう欠点も払いおとすときが間もなく来る。
肉体というよけいなものとおいっしょに罪や堕落も私たちから離れていって、
光である精神だけが、眼に見えない光と思想の元素だけが、造物主が人間に
宿らせるためにつくったときと同じ純粋な状態で残る。それが元あった場所に
もどって、あるいは人間よりももっと気高い天使に宿ることになって、それから
さらに栄光の階段を昇っていって青ざめた人間の魂が最後には熾天使(してんし)に
なって輝くかもしれない。その反対にそれが堕落して悪魔に宿ったりすることは
ないでしょう。そんなことは私には信じられない。私はそういうのとは別なことを
考えていて、それはだれから聞いたのでもなくて人に言うこともないのだけれど、
それが私の喜びであり私の支えなんだわ。それはすべての人に希望を持たせて、
永遠というものを恐ろしい奈落ではなくて故郷にする。それに、そう考えることで
罪を犯す人間とその罪をはっきり区別することができて、その人間が心から許せる一方、
罪のほうはいまわしく思われて、私は自分が一人で考え付いたこういうことのために
復讐の念に燃えることもなければ、堕落をあまりひどく恐れたり、人が私にすることで
ひどく苦しむこともなくて、いつも死を思って平静でいられる。

(P73)



もし世界じゅうの人間であなたを憎んであなたのように悪い人間はいないと
思っても、あなたの良心があなたがすることを認めて、あなたは何もとがめられるような
ことはしていないと認めるなら、あなたは一人ぼっちであることにはならないでしょう。







前の文はジェインがリード夫人の家でいじめられていた日々をヘレンに告白するところで、
その後の引用文は孤児院の院長であるブルックルハーストの言葉で傷ついたジェインを
慰めようとヘレンがあらわれた場面で登場した。

どちらもキリスト教色が漂う台詞のように感じられる。このふたつの台詞――つまり
ヘレンの存在がジェインの思想にどのような影響をおよぼしたかについてはここでは触れない。

ただ、この二つのセリフは、読者たる私たちの人生に何らかの意義を与えてくれるような
温かみがかよっていると思える。またその一方で、最初の文にはその後の展開を示唆する
ものが込められている。それはすなわち“ヘレンの死”である。

病に倒れるヘレンは、ある意味で希望に近い感情を抱いたまま天に召された。
その彼女の内面をうかがわせるものがこの台詞ではないかと思えるのだ。











孤児院を出たジェインはロチェスターという男と出会い、やがて恋に落ちる。
だが、その恋は一筋縄にはいかない。さまざまな世間的しがらみが二人を襲い、
一度は離ればなれになることになる。だが、選択肢は常にジェインに委ねられていた。




のちに登場するシン・ジンは神という存在をほのめかせてジェインを手に入れようとしたが、
ジェインは“神”に屈することがなかった。彼女は自らの意思に任せたのである。




彼女は最初の方こそ運命というべきものに翻弄されたが、その後の展開はほぼすべて
自らの手で開かれたものである。その点でも彼女はまさしく強い女といえよう。









さて、彼女と同じくキリスト教的な要素を持つ人物がシン・ジンである。
彼は前時代的な男性を象徴するものでもある。

つまりは、彼はジェインを道具的な存在と見ていたのだ。
それが、彼による求婚の場面で描かれることとなる。彼は何度も“神”という
言葉をもちいてジェインに迫ったが、それは“神”ではなくて、彼の欲である。
彼は野心に富んだ人間であった(劇中でもそれは語られている)。そんな彼にとって
“神”やキリスト教は自らのエゴを抑制する楔なのである。



彼がジェインを愛したのは、ジェインがインドの地で役立つと思ったからだ。
結婚にこだわったのも体裁に過ぎない。もしかすればそれは虚勢であったかもしれないが、
最後まで彼はキリスト教という鎧に身を固め、己のエゴをむき出しにすることはなかった。
それは聖職者の悲しみなのだろうか???






今回の解説用のあらすじには記さなかったが、最後の方で、シン・ジンがインドの地で
死んだであろうことを示唆する記述が存在する。

「主が私に予告した」と彼は書いてきた。「『我速やかに至らん』というその声は
日々ますますはっきりしたものになり、私は毎日、また刻々呼ばれるのを待ち望んでいる」

(P635)







ヘレンの台詞と対極にあるといえる。また、ジェインとの人格の違いも考えさせられる。







自らの手で未来を切り開こうとした女




天にすべての身をゆだねた男








どちらが正しいのかは分からない。作者は読者にその回答を委ねているのだろう。





ただ思うことは、この文章が最後に登場したことによって、本作が世に言う
ハッピーエンドでは終わらなかったことへの不可思議さである。






物語は、ジェインとロチェスターが結ばれたところで終わってもよかったはずである。
それなのに、最後に各登場人物のその後を描いた。シン・ジンについては引用文通り。



明確な意思はないが、おそらく作者はシン・ジンを悲劇的な人物と
捉えていたのではなかろうか?




彼は愛していた女性との結婚をとりやめ、道具論的観点からジェインに迫り、
断られ、失意のうちにインドの宣教中に死亡した。最後まで感情をあらわにすることがなかった。




いいや、できなかったのである。







彼はその感情が、人格があまりに凝り固まっていたのだ。
だが、それをキリスト教の責任と作者は描いていない。だが、見方によっては
彼はキリスト教思想の犠牲者なのではないだろうか――殉教者というと都合がよすぎる。





また、この最後の描写からはこのようなことも感じられる。



……それはジェインの幸福の陰でシン・ジンが不幸になったことである。



彼は自らの内にある感情を最後まで認めることはなかったが、ジェインに拒絶された
シン・ジンの胸中は想像を絶するものであったに違いないと私は思うのだ。

彼が柔軟な態度をとることができれば、どんなにまだマシだったか……。









映画かドラマか出典は忘れたが、


愛は犠牲を伴うもの


という言葉を耳にしたことがある。
本作の感想をこの言葉で締めくくりたいと思う。

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はじめまして

拙ブログにお越しくださり ありがとうございます。
「ジェーン・エア」はずいぶん前に読んだので、細かいところはうろ覚えでしたが、こちらの記事で、少し思い出しました。読んだ当時は、妹のエミリー・ブロンテが書いた「嵐が丘」より、こっちの方が好きでした。でも、作品としては、「嵐が丘」のほうが記憶に残っているところを見ると、上でしょうね。

Re: はじめまして

こちらこそはじめましてですm(_ _)m
コメントありがとうございます。。。

「嵐が丘」の名前はけっこう聞いたことあるんですが、
まだ未読です。今度ぜひ読んでみたいと思います。
機会があったら、またこのブログに遊びに来てください。
プロフィール

黒 紅 茶

Author:黒 紅 茶
どこかの田舎っぺです。
ブログタイトルの“Of”は
飾りです。偉い人にはそれが
分からないのです(苦笑)
詳しくは「はじめに」を
読んでくださいな。

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