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「はつ恋」

ツルゲーネフの「はつ恋」を読んだ。
週刊ポストだったか現代だったかのコラムで太田光代さんが
紹介していて、以前から気になっていた本だった。







あらすじ:

とある屋敷で、三人の紳士が初恋の記憶を語り合っていた。
そのうちのひとり、40代のウラジーミル・ペテローヴィチは、
自らの初恋を語るにあたって、手帳を取り出す。そこには、
彼の青年時代の記憶が書き綴られていた。

16歳のウラジーミルは、モスクワ・ネスクーチヌィ公園の前の別荘に
両親とともに住んでいた。貴族の出の母親、財産目当てでその母と結婚した父。
その二人の間に生まれたウラジーミルは何不自由ない生活を送っていた。

ある日、彼の家の隣にゼセーキナという貧乏貴族の一家が引っ越してきた。
ウラジーミルは、その家の娘であるジナイーダに一目惚れをする。
年上のジナイーダは美しく、医者や騎兵隊の職を持つ男たちが彼女にむらがっていた。
そんな男たちを軽くあしらう彼女に、ウラジーミルは他の男たち同様求愛をする。

年の近いウラジーミルを弟のように、従者のようにかわいがるジナイーダ。
だが、ある日を境に彼女の態度は変わっていく。急に冷たくなったり、逆に優しく
なったり――そんな彼女の気性にウラジーミルは惑わされ、苦しむ。
彼はジナイーダが誰かと恋に落ちたと察する。それでもウラジーミルは彼女に
恋をする。ジナイーダはウラジーミルに対して特別な感情を抱いていた。彼は
それを悟ってもいたのだ。

ジナイーダが恋する男をつき止めようと、ウラジーミルは張り込みを行う。
そして夜、ジナイーダの家に男が忍び込もうとしていた。その男の正体はなんと、
ウラジーミルの父親であった。漁色家としての一面を持っていた父親は、息子が
恋する女性と不倫をしていたのだ。衝撃の事実に絶望するウラジーミル。

しばらく経って、ウラジーミルの一家はモスクワ市内へ引っ越すこととなった。
ウラジーミルの父親とジナイーダとの不倫の醜聞が広がったためである。
引越しの直前、ジナイーダと出くわしたウラジーミル。彼は彼女と父親の密会を
目撃しながらも、彼女への想いを捨てることはできなかった。別れる二人。

モスクワ市内に引っ越したウラジーミル。ある日、彼は乗馬に出かけた父と
ジナイーダとの密会を目撃してしまう。ジナイーダは父のことを忘れられずに
追って来たのである。そんな彼女を馬の鞭で打ち、逃げ去る父親。
ウラジーミルは、恋が人を盲目にすることを知る――それは初恋の終わりでもあった。
それからしばらく経ち、ウラジーミルの父が謎めいた言葉を残して病死した。

数年後、ウラジーミルはネスクーチヌィの別荘で暮らしていたときの知り合いと
再会する。ジナイーダの家でよく顔を合わせた間柄の男で、その男によると
ジナイーダは他の男と結婚して家庭を築いているという、彼女はモスクワの
ある館に泊っているという。ウラジーミルは彼女に再会を試みるも、仕事の
都合でついつい先延ばしになってしまう。ようやく都合がついて館に向かうと、
ジナイーダはお産のため四日前に亡くなっていた。後悔で嘆き悲しむウラジーミル。
彼は衝動で、同じアパートに住む老婆の死に立ち会った。十字を切りながら神に
向けて赦しを乞う老婆の姿を見た彼は、死んだジナイーダや父のことを思わずには
いられなかった。そして彼も十字を切り、神に赦しを乞う――ジナイーダのために、
父のために、そして自分のために……。







本作は、ひとりの青年の初恋が始まりそれが終わるまでを描きながら、
恋が人間をどのようをどのように支配し動かすかを描いている。


明るい恋愛ドラマなどでは恋の素晴らしさがよく歌われている。
だが、恋はときに人の心をズタズタに切り裂く。


ウラジーミルは若く美しい貧乏貴族の娘に恋をした。
だが彼女の恋する相手は自らの父親であった……。その事実はあまりに重い。

想い人を父親に奪われたという事実と、父親が母を裏切り不倫をしているという事実。

そのふたつの事実が一挙に押し寄せてくるのである。だが、その事実に直面しても、
ウラジーミルはジナイーダへの想いを断ち切ることができない。引っ越し直前の
場面でのウラジーミルの言葉の苦さはなんというべきか。

「あなたがたとえ、どんなことをなさろうと、
たとえどんなに僕がいじめられたろうと、
僕は一生涯あなたを愛します、崇拝します」

(新潮文庫版:P117)

この言葉の意味、感情の正体が明らかとなるのは、ジナイーダが父親を追ってモスクワまで
やってきたあとの場面である。密会を、ジナイーダが父親に鞭で叩かれているところを
目撃したウラジーミル『これが恋なのだ』という出始めで、言葉をどんどん綴る。

『これが情熱というものなのだ!……ちょっと考えると、たとえ誰の手であろうと……
よしんばどんな可愛らしい手であろうと、それでぴしりとやられたら、とても我慢は
なるまい、憤慨せずにはいられまい! ところが、一旦恋する身となると、どうやら
平気でいられるものらしい。……それを俺は……それを俺は……今の今まで
思い違えて……』

(P125~126)


そのあとに描かれる父親の脳溢血による死と、それからの描写がまた重い。

発作の起る日の朝のこと、父はわたしに宛てて、フランス語の手紙を
書き始めていた。『わが息子よ』と、父は書いていた、――
『女の愛を恐れよ。かの幸を、かの毒を恐れよ』……
 母は、父が亡くなったのち、かなりまとまった金額をモスクワへ送った。

(P127)

手紙の文がフランス語というのも興味深いが、母親がお金を送った相手が
誰なのかを考えるのもまた面白い――恐らく手切れ金だろう。





恋がもたらすものはなにか?


その答えは人それぞれである。
はたして、ウラジーミルはジナイーダへの恋で何を得たのだろうか?
また本作を読んだ後で、読者は恋についてどのように考えるであろうか?



哀しいが、決して悲惨というわけではないこの物語。
機会があったら是非、一読を。

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黒 紅 茶

Author:黒 紅 茶
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ブログタイトルの“Of”は
飾りです。偉い人にはそれが
分からないのです(苦笑)
詳しくは「はじめに」を
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