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「肉体の悪魔」

さいきん読む本がどういうわけかな、
どれも恋愛をテーマとしたものであることに気付き、
我ながらゾッとしてしまった黒紅茶。

紹介する本は「肉体の悪魔」

少年と人妻との恋愛を描いた著者のラディゲは、この作品を
書いた当時は16~18歳ごろだったそうな!!!
「恐るべき子供たち」のジャン・コクトーにも気に入られたが、
20歳の若さで亡くなってしまう。





あらすじ:

物語の語り手“僕”は16歳。優等生でありながら、大人に対して
反骨心を秘めた少年であった。ときは第一次世界大戦のさなかで、
フランス国内では戦争によって不穏な空気がもたらされていた。
僕(以降、少年と記述)は父親の知り合いであるグランジェ夫妻の
一人娘であるマルトに恋をするようになる。彼女にはジャックという
婚約者がいたが、兵士として戦争に駆り出されたために離れて暮らしていた。
やがて愛し合うようになる少年とマルト。彼は彼女に夢中になり、
彼女との密会のために様々な嘘をつくようになる。少年の父親は二人の
関係を知りながらも黙認し、見守っていた。二人の関係は近所の人間の
噂になるが、グランジェ夫妻と戦争に出ているジャックだけがその関係を
まったく知らなかった。

夫婦の契りを交わし、ジャックの妻となったマルト。だが、少年とマルトの
関係は続く。戦争が終わりジャックが戻れば二人の関係が終わることを知りながらも、
少年はマルトとの関係を終わらそうとはしない。むしろ、日を追うごとに二人の
関係は強まっていくのだった。マルトは心の支配を少年に委ねてもいた。

ある日、マルトは少年に重要な告白を行う――マルトは妊娠したのだった。
そのことに驚く少年。彼はジャックからマルトを勝ち取ったことへの喜びとは別に、
出産によってお互いが家族から見捨てられるのではないかといった不安に苛まれるようになる。
やがて少年は猜疑心も募らせていく。マルトのお腹の子供はジャックの子ではないかというのが
その猜疑心の正体である。

マルトの家での密会が難しくなり、少年はマルトと別の場所で密会をしようとする。
ところが翌日、無理がたたってか、マルトは風邪をひいてしまう。それ以来、少年は
マルトとの接触が難しくなってしまった。はじめマルトは手紙を使って近況を知らせようと
したが、夫であるジャックが戻ったために手紙を送ることができなくなる。マルトは手紙で、
生まれてくる子供の名前を少年と同じ名前にすることを述べた。

早産を迎えたマルト。彼女が生んだ子供はなんと少年の子供であった。その事実に喜んだのも
つかの間、産後の疲労が原因かマルトは亡くなってしまう。愛した女性の死に悲しむ少年。
だが彼は、マルトが死の直前に少年の名前を口にしたこと、少年の名前を冠した子供が
これからも生き続けることに小さな救いを見いだす……。







少年と人妻の悲しい愛の物語。だが、人妻といってもマルトは少年の二、三個上に過ぎない。
はじめは弟と姉のような間柄だったのが、少年はマルトにキスを求められ、たちまち
愛欲の世界の虜となってしまう。


幸福というものは大体利己的なものなのだ。
(新潮文庫版:P31)

二人の関係はじつにインモラルである。また、マルトが好む本がボードレールの「悪の華」と
いうのも興味深いものだ。ここに、若い女性が持つ危うさというものが象徴されているのかも
しれないのだ。少年には、マルトとの関係が“かりそめのもの”であるという自覚があった。
ジャックが戻れば、自分は捨てられるという恐れだ。だが一方で、マルトとの恋愛がずっと
続くだろうという確信めいた思いもあった。二人の恋愛には遊戯的側面があったわけである。
けっして、一時期流行った純愛の物語ではないのだ。




密会という遊戯。
だが、それをやるには物語の語り手はあまりに若すぎるのだった。


 僕はマルトを恨んだ。なぜなら、感謝に輝いた彼女の顔で、肉体の関係がどれほどの
価値を持つものであるかが僕にはわかったからだった。僕は、自分より前に彼女の肉体を
目ざめさせた男を呪った。僕はマルトの中に処女を見ていた己れの愚かしさを思った。
他の時代だったら、彼女の夫の死を願うのは子供らしい空想だったにちがいない。だが、
この願いは、自分で手を下したものとほとんど同じくらい罪深いものとなっていた。
僕の幸福は戦争のおかげで生れかかっていた。僕はその大詰めもまた戦争に期待していた。
ちょうど無名の者がわれわれのかわりに罪を犯してくれるように、戦争が僕の憎悪に助力して
くれることを期待していたのだった。

(P64)

童貞を失った少年の心の叫びである。
彼女はマルトが処女であることを望んでいた。ところが、彼女はすでにセックスの
喜びをしる大人の体を持つ女性であったのだ。そのことが少年の嫉妬をかきたてた。

この記述に、少年の未熟さと純粋さが垣間見える。


彼はマルトとの関係を深め、やがては妊娠させる。彼は幼いために
自らの行為がアバンチュールを越えた、取り返しのつかないものごととなったことに
気がつかないでいるのだ。読者は二人の関係が悲劇的な結末を迎えることを予期しながらも
ページをすすめずにはいられない。

途中、少年はスヴェアという別の少女とたった一度の肉体関係を築いたり、旧友のルネと
再会を果たしたりするが、物語の流れにはそれほど左右しない。それほどまでに
物語の主人公ふたりは密接な関係を築いているのだ。


マルトとの恋愛に溺れ、他のことに手がつかないでいる少年はこう独白する。

 恋愛ほど人を夢中にさせるものはない。人は恋愛しているからこそ怠惰なので、
そのためにその人が怠け者であるとは言えない。恋愛は、その唯一の実際的な誘導療法は
仕事であることを漠然と感じている。だから恋愛は仕事を敵視している。そして、
いかなる仕事をも許さないのだ。だが恋愛は恵み深い怠惰だ。ちょうど、豊かな実りを
もたらす静かな雨のように。


詩的で、きれいな文章だ。
ここにも少年の純粋さがある。それは過ちを知らない未熟な精神ともいえるだろうか?






マルトを支配しようとするところや、自らの行為を肯定する記述を読むと、
少年のわがままさに気付かずにはいられない。しかし、少年を憎むことは難しいだろう。
恋ゆえに少年はすべてが分からないのだ。彼はいわば迷える子羊といったところだ。

やがて彼はマルトの死と対面する。だが、少年が抱える悲しみの深さはそれほど
描かれない。なぜなら、彼はマルトを失いながらも、希望を持っているからだ。
その希望とは、マルトと少年との間に生まれた子供である。そして、マルトはその
子供の名前に少年と同じ名を授けたのだ。それは少年とマルトとの愛が永遠となった
ことをあらわすものとも捉えることが可能だろう。二人の間に生まれた子供が生きている
限りは、愛は永遠なのである。


この物語を読み終えたあとで、私は「天使の卵」という日本の現代小説を思い出した。
こちらは女医と専門学生との恋愛を描いたものである。「肉体の悪魔」を読む人、
あるいは読んだ人には、こちらもおすすめしたい。







ということで、「肉体の悪魔」についてのレビューはここまでにしたい。

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ブログタイトルの“Of”は
飾りです。偉い人にはそれが
分からないのです(苦笑)
詳しくは「はじめに」を
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