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「冷たい熱帯魚」

園子温という名は、今後の日本映画界の歴史において
いったいどのような意味をもたらすのだろうか?

過去には「自殺サークル」や「愛のむきだし」、最近では「恋の罪」や
「ヒミズ」、「希望の国」などの異色作を世に送り出してきた監督。

そんな彼が、実際に起きた事件をモチーフに作り上げたのが、今回ここで
紹介する映画「冷たい熱帯魚」である。



あらすじ:

静岡のとある町で小さな熱帯魚店を経営する社本信行。彼は今は亡き前妻の
娘・美津子と、若い再婚相手の妻・妙子と暮らしているが、その家庭環境は
冷めきっていた。父の再婚がショックで反抗期に入った美津子は、不良仲間と
たびたび家を出るようになり、方々で万引きを繰り返していた。ある夜、
社本は近所のスーパーから連絡を受ける。娘の美津子が万引きで捕まったと
いうのだ。社本は妙子とスーパーへ行き謝罪するが、店の店長の怒りは
収まろうとしない。そんな彼らの前に、村田幸雄という男があらわれた。
村田の説得で店長は警察沙汰にするのをやめ、社本は胸をなでおろす。
社本の一家は村田の経営する大型熱帯魚店を見学することになり、さらに
村田から、美津子をアルバイトとして雇わせてもらえないかとまで言われる。
美津子は翌日から村田の店で働くこととなり、社本は妙子と二人で暮らすことと
なった。娘が村田の店で働くことで更生するすることをのぞむ社本。彼の頭には
幸せな一家団欒の風景が浮かびあがっていた。

妙子とともに村田の店を訪れた社本。村田は社本をさきに店に帰し、妙子と
ふたりきりで話をする。村田は、妙子が抱えている問題をズバりと言い当て、
彼女を籠絡させる。村田に送られ社本の店に戻った妙子は、村田が仕事の話を
したがっていると社本に伝える。妻の言葉に動かされた社本は、ひとりで村田の
店に向かうことに。社長室に通された社本は、村田のビジネスパートナーを称する
二人の男、筒井と吉田と知り合う。その席で、社本は村田が熱帯魚を使って
悪逆非道なビジネスを行っていることを知る。村田は熱帯魚を通常の価格よりも
倍以上のお金で他人に売りつけようとし、吉田にその資金提供を持ちかけていたのだ。
あまりの額の大きさに吉田は申し出を一度は断ろうとするも、筒井と村田の説得を
受け、取引に応じる。そんな奇妙な光景に社本は絶句する。そしてさらに、社本の前で
信じられない出来事が起きる――村田の妻・愛子から貰った栄養ドリンクを飲んだ吉田が
目の前で突然死んだのである。それまで親切そうな顔をしていた村田の態度は一気に豹変、
村田は社本を脅し、吉田の遺体を車に運ばせ、社本はその車を運転し山奥に向かうことに。

村田と愛子、そして社本は山のある小屋に辿り着く。そこで村田夫妻は吉田の遺体を
手際良く解体していく。二人はこれまで何十人もの人間からお金を騙し取り、邪魔になれば
殺害し、遺体をバラバラにして処分していた。弱気の性格の持ち主たる社本は、村田夫妻に
よって殺人と詐欺の共犯者にさせられてしまった。村田は社本に対し、逆らえば妻と娘の
生命はないと脅しをかける。社本は何事もなかったかのように自分の店に帰宅する。

数日後。吉田と深いかかわりを持つ若いヤクザの集団が村田の店にやってくる。
大金を持って行方不明となった吉田がどこに行ったかを詰問するヤクザたちに、
村田夫妻は一計を案じる――社本を証言者として利用したのだ。ヤクザの前で夫妻は
泣き叫ぶ演技をし、ヤクザたちは吉田の居所が分からぬまま店を立ち去ることになる。
共犯者としての道からどんどん引き返せなくなってきた社本は、娘である美津子となんとか
話をしようと試みるも、美津子は父親である社本を完全に拒絶していた。そんな社本に、
村田のビジネスパートナーである筒井が接近する。筒井は密かに愛子と肉体関係を結び、
いずれは村田を始末して彼がこれまで手に入れた大金や悪徳ビジネスを引き継ごうと
企んでいた。社本は筒井から暴力をふるわれるも、心の弱い社本には為すすべもなかった。

鬱々とした気分をひそめ、何気ない顔をして日々を過ごす社本のもとに、静岡県警の
刑事二人があらわれる。二人は以前から村田の周辺で大勢の人間が行方不明となっていることを
疑問に思い、調査を続けてきた。しかし、村田の完全犯罪の前に、刑事は打つ手がなかった。
そこで彼らは社本を警察の協力者に引き入れようと試みたのだ。社本は警察の存在に希望を
見出すも、それを打ち砕くかのごとく、村田から呼び出しの電話がかかる。

村田とともに向かった場所は、筒井の自宅。家主である筒井は不倫相手である愛子に
よって毒殺されていた。すべては筒井の裏切りを読んだ村田の陰謀であった。その場にいた
筒井の部下である大久保も二人に殺害され、社本は筒井と大久保の遺体を車で山に運ぶことに
なってしまう。山小屋のなかで、狂喜しながら遺体をバラバラにしていく村田夫妻。
夫妻の手から逃れたい思いでいた社本に対し、村田は言葉の暴力を浴びせる。

村田は、美津子の不在で社本が内心喜んでいることを知っていた。社本がこれまで
妻である妙子とセックスするために、何度も近くのラブホテルに通っていたことや、
実は父のことも考えた上で家を出た美津子のこと、妙子が社本との結婚を後悔していること
など――社本家の人間の心の闇をすべて知り尽くしているかのようだった。そんな村田の
言葉の暴力の前に打ちひしがれた社本は、村田に殴りかかるもも、腕力のない社本の拳は
むなしく村田の頬に当たるだけであった。プライドも何もかも打ち砕かれてしまった社本に、
村田はこれまでの仕事の手伝いの“ご褒美”として、愛子とセックスすることを許可する。
社本は村田によって愛子とのセックスを強要されることになる。そのセックスの最中、社本は
突然、車の中から鉛筆のような尖ったものを取り出し、それを使って村田をメッタ刺しにして
しまう。瀕死の状態に陥った村田と、突然の出来事に言葉の出ない愛子。社本は愛子を脅し、
二人で瀕死の村田を山小屋に運ぶことに。豹変した社本は、愛子に包丁を差し出し、村田を
“ラクにする”よう命ずる。ところが愛子は何を思ったか、小型テレビを持って瀕死の夫を
撲殺してしまう。愛子は社本の狂気に惹かれ、彼を今後のボスと認めたのだ。そのボスの命令を
受け、彼女は夫だった男の体をどんどん解体していく。そして社本は服を着替え、町へ戻る。

社本は村田の経営する店に向かい、美津子を自分の店に連れ戻す。そして、妙子と三人で
食事をはじめる――社本は夢見ていた一家団欒の風景をなんとか再現しようとしていたのだ。
美津子は不良仲間に誘われ店を出ようとするも、不良仲間は社本によって殴り倒され、彼女も
社本の暴力によって気絶し、店に戻される。そして社本は、気絶する娘の目の前で美津子を
無理やり犯す。自暴自棄になった社本は警察に通報し、再び山小屋に戻った。

山小屋の風呂場では愛子が解体作業を続けていた。その彼女の頭を、社本は小屋の中にあった
マリア像で殴り、さらに彼女の体に包丁を突き刺す。愛子は村田の肉片の前で息絶える。
社本の通報を受けかけつけた二人の刑事は、村田と愛子の無残な姿を前に絶句する。
妙子と美津子の二人も、刑事に同行して山小屋にやってきていた。外の椅子に腰をかけ、
憔悴しきっていた社本に、妙子は涙を浮かべながら近づき、抱擁をかわそうとする。そんな
彼女を社本は包丁で刺し殺し、その勢いで美津子を襲おうとする。そして社本は娘の前で
自らの首を切り裂き、死亡する。目の前で父親が壮絶な死に方を果たしたにもかかわらず、
美津子はなぜか狂喜し、父の遺体を何度も蹴飛ばす……。










若い30代の女性がスーパーで買い物カゴをもち、冷凍やレトルトの食品を乱暴に
カゴのなかに入れ、やがてレジに。女性は自分の家に戻り、スーパーで買った商品を
電子レンジで温める。そしてそれは、自分と、夫と、その連れ子の晩御飯となる・・・。


これが、この映画の冒頭シーンである。
映画のタイトルがあらわれるのはおよそ20分後。
この最初の20分間で繰り広げられるのは、ある家族の破綻した家庭環境である。

仲の良い、家族風景を夢見る社本だが、彼は夢を見るばかりで、破綻した現実を
顧みようとはしない。そうするには彼はあまりに弱い存在なのだ。その彼の前に
突然とあらわれたのが、でんでん扮する村田である。

独自の犯罪哲学を持つ村田の、その犯行の動機は不明である。ただ、彼は
自分の「すきなことをすきなだけやる」だけのようだ。そんな村田に追従するのが
愛子という若い妻。この二人ははっきりいって狂っているとしか言いようがない。
弱い人間たる社本は、この二人の行う完全犯罪の共謀者と化し、精神を病んでいく。
彼は自分がそれまで逃げてきた現実に否でも向き合わなければならなくなったのだ。

社本を叱咤する村田の姿には、「父性」のようなものも感じられる。村田という
存在との接触によって、社本は自らの内なる本性に気付くわけだが、それはあまりに
残酷なものである。“むきだし”にされたといってもいいかもしれない。
暴走した社本は村田をめった刺しにするが、それは当然の帰結であり、残虐なシーンで
あるにもかかわらず、爽快感すらおぼえてしまう。観客からみても、この場面は
カタルシス(感情の浄化)の場面ではなかろうか?

しかし、それまで凶悪な犯罪者としてふるまってきたはずの村田が瀕死の姿になって
突然、「もう悪いことはしません」みたいなうわごとをいうところには思わず吹いた。
夫をメチャクチャにされたのに、夫をそうした相手に従おうとする愛子のマゾヒスティックな
ところはとても怖いが。



そんな村田夫妻は、社本の「受難」のための礎として退場するのだが、
(肉体的にも精神的にも)傷だらけになった社本にはもはや救いはない。彼は美津子に対し、
人生について、生について訴えかける。それは彼がこれまで経験してきた痛みの総括だ。
彼の最後のセリフは、とても哀しく痛々しい。

その父親を狂喜しながら蹴飛ばす美津子の台詞がまた恐ろしくもある。
「やっと死にやがったな、くそジジイ」
「おい、立てよ! 立ってみろよ!」


父親に対する完全なる拒絶(死の前のセリフの全否定)と捉えるのがスジだろうが、
同時に美津子の「強がり」とも感じられる。父を失った悲しみというのはあると思う。
しかし、反抗期の性格がそれを許そうとはしなかったのではないか。

村田の店で、金魚を肉食魚の水槽に入れるときの美津子の笑顔は、村田の笑顔と
同じような狂気に満ちていたが、それはその年の子供がもつ残酷なまでの無邪気さともいえる。





本作は残酷な物語だ。エロくて、グロくて、そしてエグい。
(ただ、エログロについては、他ブログやアマゾンレビューでいうほどの
ものではないように感じられる。「食人族」や「オールナイトロング」、
「グロテスク」や「ソドムの市」「ネクロマンティック」や「ブレインデッド」、
そういったキワモノを見てきた人には、まぁ、優しいだろう・・・笑)




この物語が現実の世界に生きる私たちに訴えかけるものは、
だいいちに、生きることの痛みだろう。
そして、だいにに、痛みを抱えながら強く生きてゆかねばならない
ということではないだろうか?

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黒 紅 茶

Author:黒 紅 茶
どこかの田舎っぺです。
ブログタイトルの“Of”は
飾りです。偉い人にはそれが
分からないのです(苦笑)
詳しくは「はじめに」を
読んでくださいな。

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