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「ブルーベルベット」

昨日は東京国立近代美術館の「フランシス・ベーコン展」に
行ってきた当ブログ管理人。以前、ある友人は彼の絵について
「見てると頭おかしくなる」というようなことを言ってたけど、
長い時間、絵を見ているとたしかに頭がおかしくなりそうになった。

さて、今回フランシス・ベーコン展を見に行ったのは別に彼の絵が
好きというわけではない(そもそも、絵画について知識ないし!!)。
デイヴィド・リンチの映画を理解する手助けになるかも…と言う感じで
見に行ったのだ。てことで今回は「ブルーベルベット」を紹介したい。



あらすじ:


大学生のジェフリーは故郷の父親が病気で突然倒れたことを期に大学を
休学し、アメリカ南部の田舎町ランバートンへと帰郷する。彼は父の
見舞いの帰り道の草むらで不思議なものを発見する。それは切断された
人間の耳であった。ジェフリーは父の知り合いのウィリアムズ刑事に耳を
届ける。そして彼は刑事の娘であるサンディと交流するようになった。

父の話を盗み聞きしたサンディによると、ドロシー・ヴァレンズという
クラブの女性歌手が事件に関係しているという。好奇心旺盛なジェフリーは
事件解決の手掛かりをさぐるべく、ドロシーの協力を得て害虫駆除と偽り
ドロシーのアパートに侵入。部屋の鍵を手に入れることに成功する。事件に
深入りするジェフリーを心配するドロシーだが、彼女もまた好奇心と、
彼への興味を抑えられなかった。

ある夜、ジェフリーは手に入れた鍵を使ってドロシーの部屋に侵入する。
だが彼はすぐにドロシーに見つかり命の危険にさらされる。だが彼女は彼を
殺さず、クローゼットに隠れるよう告げる。ほどなくしてフランクなる男が
あらわれ、ドロシーに対しSMプレイを行う。フランクがいなくなったのち、
ジェフリーも彼女の部屋から出て行った。

異常な一夜の出来事を目撃したジェフリー。彼はドロシーがフランクによって
家族を誘拐され、性行為を強要されていると推理する。だが、警察に届けようにも
物的証拠はなく、また下手をすれば自分が逮捕されてしまう。そこでジェフリーは
“張り込み捜査”を行い、フランクのアジトや、彼が麻薬犯罪にかかわっていることなど
写真に収める。ジェフリーはドロシーの部屋を訪ね、警察に届け出を出すよう説得するも、
彼女は頑なに拒む。彼は彼女をどうしても助けたいという思いにかられていく。

事件にのめりこんでいくジェフリーに対して責任を抱くようになったサンディ。
幸せな夢を見る彼女はジェフリーに恋をしていた。またジェフリーも彼女のことを
思うようになっていた。だがその一方でジェフリーはドロシーにも惹かれていた。
彼はついにドロシーと激しく肉体関係を結ぶに至る。だが部屋から出た直後、フランクの
一味と出くわして捕らわれの身となってしまう。

麻薬売買人であるオカマのベンの店に連れていかれたジェフリー。彼はそこにドロシーの
息子が監禁されていると知る。ジェフリーはフランクの一味によって殴られ気絶。町の
郊外に捨てられる。傷ついたジェフリーは無力感に襲われ、もはや自分の手では解決できない
事件であると悟り、サンディの父であるウィリアムズ刑事に、撮影した写真を届けようとする。
だが警察署には、写真に写っていた男(黄色い服の男・ゴードン)の姿があった。夜、改めて
ドロシーの家に向かったジェフリー。同僚と麻薬犯罪者のツーショット写真を目にした刑事は
動揺し、これ以上事件に関わらないようジェフリーに忠告する。

事件に関わることをやめたジェフリー。ある金曜日の夜、彼はサンディをダンスに誘う。
その帰り道、二人が乗った車を別の車が猛スピードで追い掛けてくる。フランクの一味と
考えたジェフリーだが、車に乗っていたのはサンディの恋人マイクとその友人たち。
路上で口論する彼らの前に全裸であざだらけのドロシーが姿をあらわす。フランクによって
暴行され、さらに夫の命も奪われたという。ジェフリーとサンディは彼女を車に乗せ、
サンディの家に連れて行き、すぐに救急車を呼ぶ。サンディは、ジェフリーに抱きつく
ドロシーを見て、二人がすでに肉体関係を交わしたと悟り、驚きと嫉妬心とがふくらみ
取り乱してしまう。ジェフリーはドロシーの部屋に再び向かう。

その頃、ウィリアムズ刑事は部隊を引き連れてフランク一味のアジトを襲撃していた。
ドロシーの部屋に入ったジェフリーは、そこでゴードンとベンの死体を発見する。
彼はゴードンが持っていた無線機でウィリアムズ刑事に連絡をとるも、なんとフランクも
無線機を持っていた。ジェフリーを殺害するためにドロシーの部屋にあらわれたフランク。
だが彼はジェフリーによって返り討ちに遭う。駆け付けた刑事とサンディ。刑事は
ジェフリーに事件が解決したことを告げる。

それから時が経ち、ジェフリーの父は退院を果たす。ジェフリーとサンディは
家族とともに楽しいひと時をすごす。そしてドロシーも息子を抱いて幸せな笑顔を
浮かべていた。ランバートンに平和が戻ったのだ……。










「イレイザーヘッド」で商業的デビューを果たし、「エレファントマン」で
大成功を果たしたデイヴィッド・リンチ。そんな彼は、フランク・ハーバート原作の
SF小説の映画化を行うこととなった――「デューン 砂の惑星」である。だが、
この作品は商業的に失敗してしまう(このことについては別の機会で触れたい)。

「エレファントマン」「デューン」と大作映画を撮ってきたリンチは、
その世界から離れ、「イレイザーヘッド」を撮っていたインディペンデントの時代に
戻る。そして彼はある描画から本作を作るインスピレーションを得ることになる。

性的な面をふくめ、異常な描写が多い本作は、公開時にかなり物議を醸した。
とくにヒロインであるドロシーを演じたイザベラ・ロッセリーニは、その
非難の的となったという。だが、映画のヒットとともに非難はやがて称賛へと
変わっていった。フランク役のデニス・ホッパーも数々の賞を手に入れた。


ディヴィッド・リンチ自らも作風のターニングポイントとして認める本作。
今回はいくつかの項目にわけて作品世界を読み解いてみたいと思う。





○耳から始まる物語

セックスと暴力シーン、そしてシュールな描写に目が奪われがちな本作だが、
物語自体はとてもシンプルなプロットとなっており、のちの作品と比較してみると、
これほど分かりやすいものはないのではないかとも思える。

主人公ジェフリー(演:カイル・マクラクラン)は父親が倒れたことを期に
故郷へと戻る。そして彼は草むらで人間の耳を発見したことを期に、インモラルな
世界への冒険をはじめることになる。ここで注目すべきは耳だ。なぜ耳なのだろう?

耳は聴覚をつかさどるものであるが、同時に物語の(受信)アンテナでもある。
文字や映像などのメディアが発達する以前において、人々は口承を通じて物語を
語り継いできた――口承文芸と呼ばれるものだ。耳は情報や意志疎通にかかわる意味の
ことわざでもたびたび登場する。物語の入り口の鍵としては、同じ五感である視覚、
つまり“目”でもよかったのではないかと思える。だが、目からはこの映画の物語は
展開していかないだろう。「百聞は一見にしかず」ということわざがある。これは
ざっくりいってしまえば、不確かな情報を得るよりも自分で見た方が早いという
意味である。ここで注目すべきは“百聞”と“一見”だ。目はある方向しか見ることが
できない――目を動かさなくては。だが耳の場合は、目のように動かさずとも周囲の音を
入れることができる。それは情報の蓄積量の問題ともいえる。

つまりここでいいたいのは、目からはひとつの物語しか生まれないということだ。
耳は聞きたい音以外の雑音をも吸収するが、それを物語という観点から考えると、
耳はさまざまな物語を吸収する力を持つといえる。耳の穴にズームインすることは、
様々な物語が待つ異空間(カオス、ブラックホール)へと入っていくことに
ほかならないのだ。同じ穴のある鼻からは物語は生まれまいと思える。



○キャスティング

片耳を発見したことを期に不思議な世界へと入り込んでいくジェフリー。
彼は世の中というものがとても不思議なものであると信じている。
そして彼は好奇心から少年探偵のように事件を追い、性と暴力の世界を体験する。
彼は「不思議の国のアリス」の主人公アリスと同様の役割を果たしているといえる。

主人公を演じたカイル・マクラクラン。「デューン」に引き続き主役を演じた彼は、
のちに「ツイン・ピークス」でFBI捜査官クーパーを演じることになる。役は
異なるも、「ブルーベルベット」のジェフリーと「ツイン・ピークス」のクーパーには
同じ俳優が演じているというほかにある共通点がみられる――世界への認識だ。

世の中の不思議を受け入れるジェフリーは、フランクとドロシーによって繰り広げられる
性と暴力の世界にもすんなりと入り込むことができた。彼は世界が極めて不条理なもので
あると認知しているのだ。それに対して、映画のサブ・ヒロインである女子高生の
サンディ(演:ローラ・ダーン)は、世界に幸せの幻想を追い求めている。彼女に
とってジェフリーが語る出来事は絵空事であり、受け入れたくないことなのだ。
だが彼女は全裸のドロシーを目の当たりにしたことで、不条理な世界、つまりは
現実の残酷さを目の当たりにし、ひとり「私の夢はどこ?」と泣き崩れてしまう。

性と暴力の世界が子供から大人へと成長(夢から醒めて現実へと立ち返る)象徴と
考えると、ドロシー(演:イザベラ・ロッセリーニ)とフランク(演:デニス・ホッパー)の
二人からは父母性的役割をも感じられるだろう。性と暴力の世界の案内人ともいえる
フランクを演じたデニス・ホッパーは、アメリカン・ニューシネマを代表する俳優でも
あるが、彼は一時期ドラックと酒におぼれ業界的にも干されていた。本作はそんな彼の
復帰作でもあるわけだが、酒とドラッグから解放された俳優が演じた役が麻薬の売人と
いうのは皮肉な話とも言える。劇中では何度も「fack!」を連呼し、ドロシーに
赤ちゃんプレイ(?)を強いたり、彼女の歌に心から涙したりと、サイコな演技を
連発するが、これはデニス・ホッパーだからこそやれた演技なのだろう。

フランクによって家族をさらわれ、性行為を強要されるドロシー。そんな彼女も
精神的に破たんしている(先天的なものか後天的なものかは別にして)。
家族をさらわれ無理やり性行為をしていながらも、彼女はそこに快楽を感じていた。
ジェフリーに対して「ぶって!」と言ったのも、そのあらわれだろう。
家族をさらわれたことによる不安と、SM行為への快楽の二面性。

二面性という言葉からもう一度フランクという人物を考えたとき、「fack!」とは
別の、彼のセリフが思い出される。「俺を見るな!」だ。彼はドロシーやジェフリーに
何度もそう叫んでいる。よく映画に登場する悪党は、「俺を見ろ!」といって対象の
人物を威嚇する。だが本作の悪党フランクは「俺を見るな!」という。それは犯罪者で
ある彼の心の弱さのあらわれなのだろう。赤ちゃんプレイ(?)などの性的に倒置した
部分を他人に見られたくないのだ。それは中高生が家族にオナニーを覗かれたくないのと
同じようなものだ。

フランクとドロシー。性と暴力とを象徴する彼らは現実の陰の部分の象徴でもある。
誰もが彼らになりうる可能性を秘めているともいえるだろうと思う。




○耳から終わる物語

耳が性と暴力の世界への入り口であり、フランクとドロシーがその住人であると
するのなら、その世界へと入り込んだジェフリーとサンディにはどのような変化が
見られたのだろうか? 

じっさいには何の変化もしていない。ここでいう変化とは言葉を変えると汚染ともいえる。
つまりその世界に埋没してしまうということだ。だがジェフリーもサンディもそうは
ならなかった。映画の最後に描かれるのは、彼らとその家族の幸せな様子。
彼らは「ああいう世界もあるんだ」と受け入れたうえで、自分たちの幸せな世界を
築こうとしているのだ。映画においてサンディはコマドリを幸せの象徴と言い、ラストでは
彼らの前に虫をくわえたコマドリが姿をあらわす。この黒い虫はおそらくジェフリーらが
体験した出来事をあらわしているのだろう。それを虫より大きなコマドリが食するというのは
その世界を拒絶せず受け入れることを意味するのだ。

人間というのは大なり小なり醜い部分を持つ。それを隠し遠ざけたいというのが人の
本性というものなのだろうが、はたして、それは本当に良いものなのだろうか?
人間が本当にやらなければならないことは人間の本性に立ち向かうことなのではないだろうか。
ジェフリーとサンディはその本性に立ち向かい、それを見事に超越してみせたのだ。



○記号の数々

映画評論家・町山智浩の本でも指摘されていることだが、本作には
フランシス・ベーコンの影響が多分にみられる。映画のクライマックスである
ドロシーのアパートにおける不気味な遺体は、ベーコンの絵からひらめいたもので
あるようだ。しかし、どのような経緯であの二人はああいう無残な姿となったのか…。

本作には冒頭の父親が倒れる場面からすでに性的なものが登場している。
それについては枚挙にいとまがないが、後の作品を見るうえで気になる描写というか
要素というか“記号”がいくつか見られた。そのなかでも気になったのはふたつ。

ひとつめは映画のオープニングとエンド・タイトルをかざる青いカーテン。
「ツイン・ピークス」の赤い部屋をはじめ、異空間を演出する要素として
なんどもこの後カーテンが登場することとなる。

ふたつめは炎。
暗い画面から急にあらわれる炎の登場も、のちの作品でよくみられる。
この炎は、空間だけでなく時間や人物の精神の変化をもあらわしている。
本作ではジェフリーの葛藤の象徴のように思えた。


このほか、郊外や田舎町、丸太、ハイウェイ、フェティシストなどもみられる。









デイヴィッド・リンチというとワケのわからない監督というふうに
いわれるが、少なくともこの作品はまだワケの分かる作品といえる。



とりあえず、長々と思ったことをめちゃくちゃに打ち込んでみた。
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飾りです。偉い人にはそれが
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詳しくは「はじめに」を
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